ショート動画では、音を出さずに見る人も少なくありません。そのため、画面に出す文字(テロップ)は大切な役割を持っています。
一方で、話した言葉をすべて字幕にすると、かえって見づらくなることがあります。この記事では、テロップを「全部書かない」ことで伝わりやすくする考え方を紹介します。
字幕とテロップは目的が違う
まず言葉を分けておきます。
- 字幕:話している内容をそのまま文字にしたもの。聞こえない人や、音を出せない場面で内容を追うためのもの
- テロップ:内容の中から要点を選んで、強調として見せる文字
どちらが良い悪いではなく、役割が違います。ショート動画では、画面が狭いため、長い字幕を出し続けると映像が見えなくなります。要点だけを出すテロップのほうが、向いている場面が多くあります。
「要点だけ抜く」とはどういうことか
たとえば、話者が次のように言ったとします。
「えーと、私が入社したときは、本当に何もわからなくて、毎日不安だったんですけど、先輩がていねいに教えてくれたので、少しずつ慣れていきました」
これをそのまま出すと、画面が文字でいっぱいになります。要点を抜くと、次のようになります。
- 「何もわからなかった」
- 「先輩がていねいに」
- 「少しずつ慣れた」
話の流れは、音声が伝えます。テロップは、見る人が「ここが大事なんだな」と理解する目印として使います。逐語で書かないことで、画面に余白ができて、映像と話者の表情も見えるようになります。
1回に出す文字は10文字を目安に
私たちは、テロップの長さを最大10文字ほどに収めることを目安にしています。1行でさっと読み切れる長さだからです。10文字に収まらないときは、次のように削ります。
- フィラー(えーと、あのー)を取る
- 丁寧な言い回しを、短い言い切りにする
- 修飾語(とても、本当に)は、強調したいもの以外は取る
- 名詞や動詞だけを残す
短くすると、読むために目線が動く時間も短くなり、映像から目を離さずに済みます。
置く位置:SNSの操作ボタンに重ならない場所へ
InstagramやTikTokなどでは、動画の下部と右側に、投稿者名や説明文、いいね・コメントのボタンが重なって表示されます。テロップがこの部分に入ると、隠れて読めなくなります。
縦型の動画を作るときは、画面の端ぎりぎりに置かず、操作ボタンと重なりにくい位置を選びます。たとえば、映像のすぐ下の余白に収めると、アプリの表示と干渉しにくくなります。書き出したあと、実際のアプリの画面で見え方を確かめると安心です。
元の字幕と二重にしない
元の動画にすでに字幕が焼き込まれている(映像に文字が埋め込まれている)場合は、その上にさらにテロップを重ねないようにします。同じ内容が二重に表示されて、読みづらくなるからです。
二重になる原因は、たいてい次のどれかです。
- 元の動画に字幕が入っていることを知らずに、新しく字幕を追加した
- 前後のテロップの表示時間が重なっていた
- 書き出しの設定が重なっていた
書き出す前に「元の映像に文字が入っていないか」を確認し、入っているなら新しい字幕は足さず、元の文字を生かします。
強調は「書体と色」で行う
重要な言葉を目立たせたいとき、文字を増やすのではなく、書体と色で差をつけます。
- 太い書体にする
- 白い文字に縁取りをつけて、背景が変わっても読めるようにする
- 強調したい言葉だけ色を変える
色は多く使いすぎず、決めた数色に絞ると、動画全体に統一感が出ます。文字の縁取りは、明るい背景でも暗い背景でも読めるようにするための工夫です。
採用動画でのテロップ例
社員インタビューの動画なら、たとえば次のような要点を選びます。
- 入社前の不安に答える言葉
- 職場の雰囲気がわかる一言
- 仕事の流れや1日の様子を表す言葉
- 応募を迷う人に向けた一言
話した内容のすべてを書く必要はありません。見る人が「自分にも関係があるかも」と感じる言葉を選ぶのが、いちばんの目的です。
テロップを入れる流れの例
実際に作業するときは、次の順番で進めると迷いません。まず、動画の話の流れを文字起こしで確認します。次に、見る人に覚えてほしい言葉を、1つの話題につき数個だけ選びます。選んだ言葉を、10文字ほどに言い換えます。そして、表示するタイミングを、その言葉を話し始める少し前に合わせます。
最後に、テロップを消すタイミングを決めます。読むのに必要な時間は、文字数が少なければ短くて済みますが、短すぎると読み切れません。声に出して読んでみて、ゆっくり読める長さを確保します。テロップが次々に切り替わると、目が疲れてしまうので、あえて何も出さない時間をつくることも、見やすさのコツです。
見る人の環境を想像する
テロップの見え方は、見る人の環境によって変わります。小さなスマートフォンの画面、明るい屋外、音を消した電車の中。そうした環境では、細い文字や、薄い色は読めません。
制作する側は、大きな画面で確認しがちですが、書き出したあとに必ず実際のスマートフォンの小さな画面で見直します。手を伸ばした距離で、一瞬で読めるかを確かめます。文字の大きさ、縁取りの太さ、背景との差を、そこで最終調整します。
まとめ
- テロップは、話した言葉の逐語ではなく、要点だけを選ぶ
- 1回に出す文字は10文字ほどを目安に、短い言い切りにする
- 画面下部や右側の操作ボタンと重ならない位置に置く
- 元の動画に字幕がある場合は、二重に重ねない
- 強調したいときは、文字を増やさず書体と色で差をつける
- 書き出したあと、実際のアプリの画面で見え方を確かめる