ショート動画は、指で流れていくフィードの中で見られます。見る人は、最初の数秒で「見続けるか、流すか」を決めています。この最初の数秒に何を置くかを、一般に「フック」と呼びます。フックは、見る人を引き止める「つかみ」のことです。
フックは派手であればよいわけではありません。動画の中身とつながっていて、しかも冒頭だけで意味が通ることが大切です。この記事では、フックの選び方と、うっかり失敗しやすい点を整理します。
フックの基本は「いちばん気持ちが動く一言」
長い動画から切り抜く場合、フックは同じ動画の中から選びます。本編のどこかに、話者の気持ちが最も動いた一言があるはずです。それを冒頭の数秒に先出しし、そのあと本編を頭から見せる構成にします。
先に結論の一部を見せて、「どういうこと?」と思わせてから説明に入る。見る人にとっては、続きを見る理由ができます。
フックにしやすい5つの型
私たちは、次の5つの型を目安に探しています。
- 意外性:「え、そうなの?」と思わせる一言
- 警告:「それ、やめたほうがいい」のように、行動を止めさせる言葉
- 数字:「8割」「3つ」のように、具体的な数が入った言葉
- 常識の逆:多くの人が当たり前だと思っていることを、くつがえす言葉
- 感情の頂点:話者の声や表情が最も動いた断言
どれが強いかは内容によりますが、迷ったときは「聞いた人が反応してしまう言葉」を選びます。説明的な文より、短く言い切った一言のほうが、冒頭には向いています。
本人の短い断言から入る
フックの話者は、質問する側ではなく、答える本人にします。「どういうことですか?」という質問から始まる動画は、答えを聞くまで何の話かわかりません。本人が自分の言葉で言い切った一言から入ると、冒頭だけで内容が伝わります。
採用の動画でいえば、司会者の問いかけではなく、先輩社員の「最初は本当に不安でした」という一言から始めるイメージです。
短さと完結のバランス
フックは短いほうが強いのですが、文が途中で切れていては意味が伝わりません。長さは1〜4秒ほどを目安にして、必要なら少し延ばしてでも、語尾まで言い切らせます。
最初の音を欠かさない
意外と多い失敗が、最初の音が欠けることです。たとえば「すごい良いって感じ」の「すごい」が切れて「い良いって感じ」と聞こえる、というように、書き出しの位置が数フレームずれるだけで、一言の印象が大きく変わります。
対策は単純で、冒頭の言葉の語頭より少し前から入れること。そして書き出したあと、冒頭の数秒だけをもう一度聞き直して、狙った言葉が最初から聞こえるかを確認します。
画面に強調したい字幕が出る場合は、音と画面のタイミングも別々に確認します。音は語頭から、画面は字幕が出そろった状態から始めると、見る人に届きやすくなります。
避けたい冒頭
- 質問役の発言から始まる
- 「えーと」「あのですね」などのフィラー(つなぎの言葉)や、前置きから始まる
- 文の途中、または語尾が切れたまま本編に移る
- フックと本編の話題がつながっていない
最後の点は特に大切です。目を引く一言を持ってきても、本編でその話をしなければ、見る人は「だまされた」と感じます。フックは、本編の根拠や背景につながるものを選びます。
1本目だけ強い、は不合格
何本かまとめて作るときに起きがちなのが、1本目はよく選んだが、2本目以降は急いで決めたため弱くなる、というパターンです。見る人は1本ずつ見ていくので、どの動画もそれぞれが初めて見られる「1本目」です。
そのため、全部の動画を同じ厳しさで見直します。迷ったときは、説明的な字幕より、色や大きさが変わって強調された、本人の短い断言を優先します。
フックを探す具体的な手順
長い動画の中からフックを探すときは、まず文字起こしを読み、強い言い切りに印をつけます。そのうえで、印をつけた箇所を実際に再生し、声の強さや表情も確かめます。文字で読むと強く見えても、声が弱ければフックには向きません。
候補が見つかったら、「この一言だけを切り出して、初めて聞く人に意味が通るか」を確かめます。通らなければ、前後に少し広げるか、別の候補に替えます。候補は最低でも2〜3個は挙げて、比べてから選ぶと、思いつきで決めるより納得感のある選び方になります。
業種を問わず使える考え方
フックの考え方は、介護・建設・運送など、どの業種の採用動画にも使えます。大切なのは、業界の専門用語や会社の自慢から入るのではなく、見る人が気になっていることから入ることです。
たとえば、未経験で応募を迷っている人なら、「未経験でも大丈夫か」「人間関係はどうか」が気になります。その問いに対する先輩社員の短い答えを冒頭に置くと、見る人は「自分のことだ」と感じて、続きを見てくれます。社内の人が「言いたいこと」と、見る人が「知りたいこと」は違う、という前提で選ぶのがコツです。
冒頭に「見せすぎない」工夫
フックで結論をすべて話してしまうと、本編を見る理由がなくなります。フックは「答えの一部」または「答えへの入り口」にとどめ、理由や具体的な中身は本編に残します。「やめたほうがいい」と警告で引き止め、その理由は本編で説明する、という形がわかりやすい例です。
まとめ
- フックは、本編の中で最も気持ちが動いた一言を冒頭に先出しする
- 意外性・警告・数字・常識の逆・感情の頂点を目安に探す
- 質問役ではなく、答える本人の短い断言から入る
- 語尾まで言い切らせ、最初の音が欠けていないか聞き直して確認する
- フックと本編の話題をつなげる
- 複数本作るときは、全部を同じ厳しさで見る