動画を編集して書き出し、そのまま公開してしまう。忙しいときほど、こうした流れになりがちです。ところが、公開後に見返すと「語の途中でカットされている」「同じテロップが二重に出ている」といったミスに気づくことがあります。
こうした失敗の原因は、編集の技術不足というより、見返しの工程がないことにあります。この記事では、動画の精度を上げるための考え方と、書き出しの前後にやるチェックを整理します。
数値だけで切ると、ずれが起きる
編集のとき、「0分12秒から0分45秒まで」のように、秒数を決めて切る方法があります。機械的で手早い一方、人の話は秒数に合わせて終わってはくれません。数字どおりに切ると、語の途中や、息継ぎの直前でぶつ切りになることがあります。
人間の編集者は、秒数ではなく意味で切っています。「この一文が言い終わったところまで」と決めて、その位置を秒数に直すイメージです。
意味で切る、そして余韻を残す
意味の区切りで決める
カットの位置は、次の順番で決めます。
- どこまでが1つのまとまりかを、意味で決める(「最初の話題が言い終わるまで」など)
- その最後の言葉の語末を探す
- 語末のあとに、ほんの少し間を足して切る
最後の言葉の直後にぴったり切ると、耳にはぶつ切りに聞こえます。語尾のあとに少し余韻を残すと、自然に終わったように聞こえます。
カットは音が静かなところで
音声の波形を見ると、言葉と言葉の間には、音が小さくなる「谷」があります。カットはこの谷で入れると、切れ目が目立ちません。文字起こしの時刻だけに頼ると、語末の時刻が実際の無音より後ろにずれることがあるため、波形も合わせて確認します。
テロップが二重になる原因
テロップが二重に見える原因は、いくつか決まっています。
- 前後のテロップの表示時間が重なっている
- 書き出し時の設定により、最後のテロップが引き延ばされている
- 古いファイルが再利用され、前回の内容が混ざっている
- 元の映像に字幕が入っているのに、さらに重ねた
原因がわかっていれば、書き出す前に機械的に調べることができます。
書き出し前:機械チェック
書き出す前に、次のような項目を機械的に確認します。人の目では見落としやすいため、ルールで調べるほうが確実です。
- テロップの時間が重なっていないか
- 終了時刻が開始時刻より前になっていないか
- 動画の長さを超えていないか
- 画面の安全な範囲から文字がはみ出していないか
ここで問題が見つかった場合は、書き出さずに直します。黙って書き出してしまうと、あとで気づく手間が増えるからです。
書き出し後:目視チェック
機械が見つけられない問題もあります。たとえば「話題とフックがつながっていない」「テロップが映像の顔に重なっている」「黒い帯がはみ出している」といったことは、実際に画面を見ればわかります。
書き出した動画から、次の場所のフレームを抜いて確認するのがおすすめです。
- 冒頭
- フックから本編に切り替わる前後
- 本編の中盤
- 末尾
あわせて、カットの前後の音も聞きます。語の途中で切れていないか、無音が長く続いていないか、音と映像がずれていないかを確かめます。
見返しなしで納品しない
私たちが大切にしているのは、最低1回は見返しを回してから納品することです。流れは次のとおりです。
- 計測(文字起こしと音の確認)
- 設計(意味の単位でカットとテロップを決める)
- 書き出し前の機械チェック
- 書き出し
- 書き出し後の目視チェック
- 問題があれば直して、もう一度書き出す
「変だな」と気づく感覚は、見返しの中で働きます。一度で完璧にしようとするより、見返しを工程に組み込んでおくほうが、現実的で安定します。
社内で動画を作るときの工夫
専門の編集者がいない会社でも、次の工夫なら取り入れやすくなります。
- 書き出したあと、必ず頭から最後まで通しで見る(再生しながら別の作業をしない)
- スマホの実機で、アプリの画面と同じ大きさで見る
- 自分以外の人にも、一度見てもらう
- チェック項目を紙やメモに書き出して、毎回同じ順で確認する
見返しのときに見る「目の順番」
見返しは、ただ通しで再生するだけでは見落としが出ます。私たちは、見る観点を分けて、何周かに分けて見るようにしています。
1周目は、内容だけを見ます。話の流れが自然か、フックと本編がつながっているか。2周目は、音だけを聞きます。語尾が切れていないか、無音が長くないか、音量が極端に変わっていないか。3周目は、文字だけを見ます。誤字、二重表示、はみ出しがないか。観点を絞ることで、同時に全部を見ようとするときより、細かい違和感に気づきやすくなります。
直すときは、原因ごと直す
見返しで問題が見つかったとき、目についた箇所だけを手直しして終わりにすると、同じミスが別の場所で繰り返されます。たとえば、テロップが二重になっていたなら、その1か所を消すだけでなく、「なぜ二重になったのか」を確かめます。
原因が時間の重なりなら、他の箇所にも重なりがないかを全体で調べます。元の映像の字幕が原因なら、同じ素材を使う他の動画も確認します。原因まで直しておくと、次の動画からは同じミスが起きにくくなります。直した内容は、簡単なメモに残しておくと、チェック項目を増やしていくこともできます。
まとめ
- 秒数ではなく、意味の区切りで切る
- 語尾のあとに少し余韻を残し、カットは音が静かなところで入れる
- テロップの二重は、原因が決まっているので書き出し前に機械で調べる
- 書き出し後は、冒頭・切り替わり・中盤・末尾のフレームと音を目で確かめる
- 最低1回は見返してから納品する