採用動画や会社の紹介動画を作ろうとして、最初にぶつかるのが「出てくれる人がいない」という壁です。カメラを向けられると緊張する、うまく話せない、顔を出すのは恥ずかしい。そう感じる社員さんは、決して少なくありません。
私たちSOIの代表・玉手志弥は、「撮られるのが苦手な人ほど、いい表情が撮れる」と考えています。苦手な人は、自分をよく見せようと「作る」ことをしない分、ふとした瞬間に素の表情が出るからです。この記事では、その考え方をもとに、職場での撮影で使える工夫を紹介します。
「ポーズ」より「会話」と「動き」
カメラの前で「自然にしてください」と言われても、自然になれる人はほとんどいません。止まって構えるほど、体も表情も固くなります。
自然な表情を引き出すには、ポーズを取らせるのではなく、会話や動きの中で撮るのが近道です。
- 質問を投げかけて、答えている途中の表情を撮る
- 作業の手を動かしてもらい、その様子を撮る
- 歩いているところ、道具を準備しているところを撮る
笑顔は「笑ってください」では出ません。会話の中で思わず出る表情のほうが、ずっと自然です。歩きながら話してもらうだけで、体の力が抜けることもよくあります。
目を閉じて、合図で開ける
構えて固まってしまう人には、一度、目を閉じてもらう方法が使えます。深呼吸をして、肩の力を抜いて、こちらの合図で目を開けてもらう。この数秒で、緊張がふっとほどけることがあります。
目を閉じている間に、「このあと〇〇について聞きますね」と次の質問を伝えておくと、意識がカメラから話の中身へ移ります。合図で開いた瞬間の表情は、構えていないぶん、柔らかくなることが多くあります。
顔を出さない「逃げ道」を用意する
顔出しは、無理強いしないことが大前提です。「顔を出さなくても伝わる撮り方があります」と先に伝えておくだけで、気持ちが楽になる人は多くいます。
- 後ろ姿(仕事に向かう背中、廊下を歩く後ろ姿)
- 手元(作業をしている手、道具を握る手、書類にペンを走らせる手)
- 声だけ(映像は職場の風景で、音声でインタビューに答える)
- 横顔や、顔の一部だけが映る構図
こうした映像でも、職場の雰囲気や、働く人の人柄は十分に伝わります。「顔が出せないなら出演できない」ではなく、「出せる範囲で出てもらう」が、結果的に撮影に協力してくれる人を増やします。
最初に「全部こちらから声をかけます」と伝える
撮影が始まる前に、出演する人へ最初に伝えたいひとことがあります。
「撮影中の指示は、全部こちらから声をかけます」
これだけで、安心感は大きく変わります。何をすればよいかわからない不安が、いちばん人を固くするからです。「立つ位置も、目線も、次の動きも、こちらで声をかけます。皆さんは、普段どおりにしていてください」と伝えます。
撮影中は、短い指示をこまめに出します。「そこで少し止まってください」「今の笑顔、すごく良いです」と、指示と声かけを重ねることで、出演者が自分で考える負担を減らします。
目立たない人を、名指しで褒める
撮影の現場では、話し上手な人や、場を盛り上げる人に目が向きがちです。しかし、控えめな人こそ、名指しで褒めてあげると表情が変わります。
「今の手の動き、すごく丁寧でした」「その話し方、聞いていて安心します」と、具体的に、その人の良いところを言葉にします。曖昧な「いいですね」より、「何が良いのか」を伝えたほうが、本人にも伝わります。
褒められた瞬間に出る、少し照れた表情は、作ろうとしても作れません。それが撮れた映像は、見る側にも自然な魅力として伝わります。
いい瞬間は、何度も来ない
どんな撮影でも、いい瞬間は何度も来ません。ふと笑った一瞬、手元の動きがきれいに決まった瞬間は、一度逃すと、同じものは二度と撮れないことがあります。
だからこそ、カメラは常に回しておく、準備の段階でも撮り続ける、という備えが大切です。本番の前後、休憩中、準備の雑談の中に、思いがけないいい表情が隠れていることがあります。
撮影の合間は、緊張が緩む時間でもあります。ここでカメラを止めず、しかし相手に「撮っている」と過度に意識させない雰囲気をつくることも、撮る側の大切な技術です。
撮影の前にできる準備
- 出演者に、撮影の流れ(いつ、どこで、何を聞くか)を事前に伝える
- 質問を前もって共有しておき、完璧に答える必要はないと伝える
- 撮影する場所を、普段の職場の中から選ぶ(慣れた場所のほうが落ち着く)
- 映してよい場所と人を、事前に決めておく
- 休憩をはさみ、疲れを見ながら進める
社員インタビューの当日の流れの例
当日の進め方の一例を挙げます。まず、撮影の前に出演者と短く雑談をして、場の空気をほぐします。この時間に、撮影の流れと、顔を出す範囲を改めて確認します。
次に、カメラを回し始める前に、一度「練習」として質問に答えてもらいます。本番ではなく練習だと伝えることで、気持ちが楽になります。実はこの練習の様子を、そのまま撮り続けておくことが多くあります。構えていない分、いい表情が出やすいからです。
最後に、撮影が終わったあとにも、少し雑談の時間を取ります。ほっとした瞬間の表情や、ひと言が、使える素材になることもあります。出演してくれたことへのお礼を、具体的な場面とあわせて伝えると、次の撮影にも協力してもらいやすくなります。
撮る側の姿勢も、映像に出る
出演者の表情は、撮る側の姿勢に大きく左右されます。撮る人が緊張していたり、焦っていたりすると、その空気は出演者にも伝わります。
撮影者がまず落ち着いて、穏やかな声で話しかけ、うまくいかなくても「大丈夫です、もう一度やりましょう」と言える環境をつくること。撮り直しを前提にして、失敗してもいいと伝えること。これだけで、出演者の肩の力は抜けていきます。いい表情は、安心できる場所で出てくるものだと、私たちは考えています。
まとめ
- ポーズを取らせず、会話や動きの中で撮る
- 構えてしまう人には、目を閉じてもらい、合図で開けてもらう
- 後ろ姿・手元・声など、顔を出さない逃げ道を用意する
- 最初に「全部こちらから声をかけます」と伝えて、安心してもらう
- 目立たない人こそ、具体的に名指しで褒める
- いい瞬間は何度も来ない。カメラは回し続ける