縦型の短い動画は、見る人が指一本で次へ進める場所です。「当社は〇〇を提供しています」と始めた瞬間に、広告だと判断されて飛ばされることは少なくありません。
飛ばされにくいのは、見る人が「あ、これ自分にもある」と思える場面から始まる動画です。この記事では、サービスを場面で見せるショートドラマの台本を、どう組み立てるかを整理します。設備業のサービスを例にしますが、考え方はほかの業種でも同じです。
最初の一秒に、説明を置かない
動画の冒頭に、タイトルや会社名、サービスの説明を置きたくなることがあります。けれども、見る人にとってそれは「これから売り込みが始まります」という合図になります。
当社の制作では、冒頭に説明テロップもタイトルも置かず、最初の声から入ります。たとえば家族の一人が「待って!」と駆け寄る声で始まります。何が起きたのかは、会話と動きを追ううちにわかります。
- 画面の一番手前に出るのは、人の声と動き
- 会社名やサービス名は、冒頭ではなく終わりに近い場所に置く
- 「何の動画か」は、最初の数秒で説明せず、場面で伝える
声から始まる動画は、見る人に「何があったの?」と思わせます。その疑問が、次の数秒を見続ける理由になります。
基本の流れは「困りごと→思い出す→相談→安心→一言で閉じる」
台本の骨組みは、次の5つの流れで作ります。
- 困りごと 日常の中で、誰かが困る場面が起きる
- 思い出す そういえば、あのサービスがあった、と思い出す
- 相談 実際に連絡し、相手が話を聞いてくれる
- 安心 任せられる、という空気に変わる
- 一言で閉じる 気持ちを短いひと言にして終える
設備の水まわりで例えるなら、朝の出かける前に水漏れに気づく。慌てているところで、以前登録していた連絡先を家族の一人が思い出す。電話をして、相談に乗ってもらう。作業の人が来てくれて、「登録しておいてよかった」と心の中でつぶやいて終わる、という流れです。
この流れには、サービスの説明がほとんど出てきません。それでも、見終わったあとに残るのは「困る前に、相談先を決めておこう」という気持ちです。
「思い出す」場面が、いちばん大事
5つの中で、とくに時間をかけるのが「思い出す」場面です。
ここは、見ている人が自分の暮らしに引き寄せる瞬間です。「そういえば、登録したな」「あの連絡先、どこだったかな」という小さな動きが、サービスと生活をつなぎます。
- 思い出す表情を、少し長めに見せる
- スマホを取り出す、画面を見せるなど、手元の動きを入れる
- 説明する台詞は短くし、「ほら、これ」程度にとどめる
サービスの特徴を台詞で並べるより、「思い出して手が動く」ところを見せたほうが、見る人は自然に受け取れます。
20秒版は、4秒刻みの5場面で考える
短い動画は、場面の数を欲張らないことが大切です。当社のサンプル「HITOFURI」(架空の味変スパイス・20秒)は、4秒ごとに1場面、全部で5場面で作っています。
- 0秒:いつもの場面(商品はまだ出さない)
- 4秒:商品が入る
- 8秒:表情が変わる
- 12秒:広がりを見せる
- 16秒:名前と行き先
1場面に詰め込む情報は、ひとつだけにします。4秒の中で「見せたいこと」を2つ以上入れると、どちらも伝わらなくなります。台本を書くときは、場面ごとに「ここで見せるのは何か」を一行で書き出して確認します。
長い版は、場面ごとの役割を決めてから台詞を書く
60秒ほどの長い版でも、考え方は同じです。当社の制作では、まず7つほどの場面に分け、場面ごとに「ここで見る人に何を感じてもらうか」を決めます。
- 何が起きたのかを見せ、ドラマへ入る
- 今は困る、という切迫感を作る
- 事前に登録していたことが、その場の行動につながる
- 電話の向こうに、話を聞いてくれる人がいることを見せる
- 家族の感情をいったん落ち着かせる
- 相談先が決まったことで、暮らしが動き出す
- 到着して、「登録しておいてよかった」で閉じる
役割が決まってから、台詞とカットを割り当てます。台詞は一つの発話を複数のカットにまたがせ、話す人の顔、聞く人の反応、手元の動きを行き来させます。会話が先にあって、画面はそれを追う形にすると、説明的にならずに進みます。
最後は「一言」で閉じる
終わりの数秒は、要約も案内も詰め込みません。見る人の気持ちを代弁するようなひと言だけを置きます。
- 登場人物の心の声(例:「登録しておいてよかった」)
- 商品名やサービス名と、次の行き先(プロフィールのリンクなど)
ひと言で閉じると、見る人の頭には「そうしておけばよかった」「自分もやっておこう」という気持ちが残ります。長い締めの文章は、せっかくの余韻を消してしまいます。
台本を書いたら、声に出して読む
台本は、読むものではなく、聞くものです。書き終えたら、実際に声に出して読み、次の点を確かめます。
- 一つの台詞が長すぎて、息が続かない文になっていないか
- 説明の台詞が、会話のふりをして紛れ込んでいないか
- 人が実際には言わない言い回し(書き言葉)が入っていないか
- 台詞を言い終わるまでの時間が、場面の長さに収まっているか
「ここは説明っぽい」と感じた台詞は、動きや表情に置き換えられないかを考えます。たとえば「24時間受付だって」のような短い確認の台詞は、画面を見せながら言えば、見る人にも情報が届きます。台詞で全部を語らず、画面に任せられるところは任せるのが、場面型の台本の書き方です。
まとめ
- 冒頭に説明やタイトルを置かず、最初の声から場面に入る
- 流れは「困りごと→思い出す→相談→安心→一言で閉じる」
- 「思い出す」場面に、いちばん時間をかける
- 20秒版は4秒刻みの5場面。1場面に見せることはひとつだけ
- 場面ごとに役割を決めてから、台詞とカットを割り当てる
- 最後は要約ではなく、気持ちを表すひと言で閉じる