短い動画を作るとき、「雰囲気が良さそうなもの」を先に作ってしまうことがあります。けれども、見た目が整っていることと、見られることは別です。
当社では、動画を作る前に、すでに伸びている動画を分解して、何が効いているのかを確かめるようにしています。この記事では、その分解のしかたと、そこで得た考え方を紹介します。数字はあえて載せず、考え方に絞ってお伝えします。
まず、作る前に「実物」を分解する
分解する対象は、自分が好きな動画ではなく、実際に多くの人に見られた動画です。実物を手に入れて、次のように要素に分けます。
- 映像:人物の見た目、場面の数、1場面の長さ、カットの速さ
- 音:声の有無、語りの調子、無音の部分、間の取り方
- 文字:テロップの量、どんな言葉が出るか
- 構成:最初の数秒に何があるか、最後に何を残すか
- シリーズ性:単発か、続きものか
文字起こしをして語りの言葉を書き出し、フレームを一枚ずつ見て、テロップを写し取ります。感覚で「いい感じ」と言うのではなく、要素ごとに書き出すのが大事です。
この作業をせずに作り始めるのは、当てずっぽうと同じです。「伸びるはず」という期待は、実物との比較を経て初めて、根拠を持ちます。
型その1:感情のモノローグと「間」
伸びた動画のひとつは、感情が動く短い物語でした。分解すると、次のような要素が見えました。
- 実写に近い質感の映像で、人物の表情がよく見える
- 語りは、登場人物の内側のつぶやき(モノローグ)
- 無音の時間がなく、声がほぼ途切れずに続く
- ただし、語りの途中にはっきりとした「間」がある
- 場面は少なく、1場面をゆっくり見せる。速いカット割りではない
- 文字は、題名のような最小限のものだけ
ポイントは、「間」です。ずっと話し続けるのではなく、感情が動く場所で、あえて言葉を止めます。その沈黙が、見る人に気持ちを重ねる時間を与えます。
速くカットを切って情報を詰め込むのではなく、少ない場面をゆっくり見せる。この作りは、見る人に「自分のことだ」と思わせるために効いていました。
型その2:保存したくなるチェックリスト型
もうひとつの型は、あとで見返したくなる、チェックリストのような動画です。
- 「ここだけ確認すれば大丈夫」という、使える情報が並ぶ
- 一つひとつの項目が短く、読み取りやすい
- 見終わったあと、手元に残したくなる
この型は、感情のモノローグ型とは目的が違います。見て気持ちが動くというより、役に立つから保存する、という使われ方をします。実際、音がほとんどなくても成立していました。
型ごとに「見る人が何をしてくれるか」が違うことを、押さえておく必要があります。感動して共有するのか、役立つから保存するのか。目的を決めずに両方を混ぜると、どちらにも届かなくなります。
同じ作り方でも、結果は変わる
分解してわかったのは、「同じ作り方をしても、同じ結果にはならない」ということです。
続きものの動画で、同じ文法で作った別の回を比べると、結果に大きな差が出ることがありました。映像の質、語りの調子、場面の数、文字の量がほぼ同じでも、です。
差を生んでいたのは、作りだけではなく、シリーズとしての文脈や、配信のタイミングといった外側の要因でした。
- 前の回を見た人が、続きを見に来るか
- 公開した時期や、広がり始めたきっかけ
- 見る人の気持ちが、その話題に向いていたか
だから、ある動画が伸びたからといって、「この作りだから伸びた」と決めつけてはいけません。逆に、伸びなかった動画を「作りが悪い」と決めつけるのも早すぎます。作りは判断材料のひとつで、結果のすべてではないと捉えます。
文字だけの動画は、避ける
分解から得た、もうひとつの大事な気づきがあります。文字だけを並べた動画は、避けるということです。
私たちが分解してきた伸びた動画には、視覚か聴覚の「きっかけ」がありました。人の表情や動き、声や音の変化です。見る人の指を止めさせるのは、情報の量ではなく、こうしたきっかけです。
動きもなく、音もなく、カット割りもない文字だけの動画は、短い動画として成り立ちません。「文字が良ければ見られるはず」という期待は、実物との比較で否定されました。低い費用で作れるからといって、文字だけに頼るのは危険です。
文字は、映像と音を助ける役にします。主役にはしません。
分解した結果を、次の企画に使う
分解したら、結果を「真似する」のではなく、「自分の題材に置き換える」ために使います。
- 勝った要素を書き出す(場面の数、語りの調子、間の取り方など)
- そのうち、題材が変わっても使えるものを選ぶ
- 題材に合わない要素は、無理に持ち込まない
- 作ったあとは、実物と並べて、足りないところを先に書き出す
たとえば、感情の動く物語を作るなら、場面を欲張らず、間を取る場所を台本の段階で決めておきます。保存されたい動画を作るなら、項目を短くそろえます。企画の段階で型を決めておくと、作り終えてから「何の動画かわからない」となるのを防げます。
作ったあとは、結果を見て、また分解します。この繰り返しで、型の精度が少しずつ上がっていきます。
まとめ
- 作る前に、伸びた動画の実物を、映像・音・文字・構成・シリーズ性に分けて分解する
- 実物との比較をしない成果物に、「伸びる」とは言わない
- 感情型は、少ない場面をゆっくり見せ、語りの「間」で気持ちを重ねる
- 保存型は、役に立つ項目を短く並べ、見返したくなる動画にする
- 同じ作り方でも、話数や配信のタイミングで結果は変わる。作りだけで判断しない
- 文字だけの動画は、視覚と音のきっかけがないため避ける